●「くすいむん」ウチナンチュウにとってのゴーヤー
「子どものころ、大嫌いだったさあ」
那覇市の住宅街、島袋カノさんはそう言いながら、まな板の上でゴーヤーを縦に真っ二つに割きました。手際よくワタとタネをとります。
「こんな苦いもの、おとなはよく食べるなあ、って。でもおばあにしかられる から食べたふりだけするの」
そう言いながらも手は動かし続けます。その朝、自宅屋上の小さな菜園で採れたゴーヤーは、濃い緑が鮮やかで見るからに苦そう。
「だけと、おばあはちゃんと見破っていて、一切れでもゴーヤーを口に運ばないと許してくれなかった。」
口元には懐かしそうな微笑みが浮かびます。
「いまじゃ私が孫にそうしてるさ。薬だから食べなさいって、きっと恐いおばあだろうねえ」
子どもがいる家ではスライスしたゴーヤーを塩でもんだりするといいます。少しでも苦みをやわらげるためですが、カノさんはそうはしません。
「この苦みがいいのさあ。これがからだにいいんだ。たくさん食べなくたっていいよ。食べられるだけ少しずつ、毎日のことさ。それが大切」
フライパンに油をひき、豆腐を焦げ目がつくくらい炒め、豚肉、ゴーヤーを入れさらに炒めます。タマネギ、ニンジンを加え、塩、コショウで味を。そして最後に卵を落とし半熟になればゴーヤーチャンプルーのできあがり。
すすめられてアツアツを一口頬張りました。
「苦い!」
思わず口をついて出てしまいました。たしかに苦い。
「苦いと言うたびに、健康になっていくさあ」
カノさんは声を上げて笑いました。
でも苦いだけではありませんでした。他の食材と一体となって、味はとても深い。この苦みは食欲、そして胃の働きを刺激するのでしょうか。お箸が止まらなくなります。そしてなんとなく胃がすっきりして、からだの中がまたたくまにきれいになったような気がするのです。たしかに子どもには、文字どおり苦手な味でしょう。でもいつかきっとその意味がわかる日がくるにちがいありません。沖縄のおばあと母親は毎日のように言い続けています。子や孫やさらにその先の世代も健康で長寿、そして幸せな暮らしが続くように。
「くすいむん(薬になるもの)さあ、そう思って食べなさい」
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