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ゴーヤーもっと知りたい
 
  長寿の秘密にせまる

cut_king.jpgカノさんに教えてもらったひとつめのことば、それが「くすいむん」です。
これは「薬」ということですが、食べ物を薬としてとらえているのではありません。しいて言うなら「からだにいいもの」というくらいの意味でしょう。
ちょっと遠回りして考えてみましょう。

食生活の中から苦みが消えつつあると言います。食べづらいからでしょうか。食の幼児化と言ってもいいかもしれません。大のおとなでも、ピーマンやセロリを食べられないという人が、けっこう多かったりします。ゴーヤーなんてとんでもない、と。
しかし、うちなんちゅうは、このゴーヤーの苦みをうまいと感じます。だから夏になると毎日のように、とびきり苦いゴーヤーを食べるのです。ゴーヤーを切り刻んで成分を分析してみればそれなりの理由がわかるかもしれません。しかし、うちなんちゅうは理屈で食べているのではありません。なんといっても、おいしいから食べるのです。

でも、だれもが子どものころからおいしいと思っていたわけではありません。ゴーヤーの苦味がきらいだといううちなーの子どもは少なくありません。しかし、おとなになると自然に、あたりまえのように食べるようになるのです。いや、ゴーヤーのない食卓など想像もできないと思うようになるでしょう。その苦みは、「子どものころ、親に言われてしぶしぶ食べた」という思い出にもつながっています。だれもが子どもの頃、カノさんのように「くすいむんさあ、そう思って食べなさい」と言われて食べてきたのです。しかし、あれほどいやだった苦味を、美味しいと感じるようになる。ゴーヤーの苦みはおとなの味なのです。

食べ方は家によってそれぞれ。ただ家々には祖母から母、そして子、孫に伝えられていく味があると言います。そうしてうちなーでは、古くから日常の食生活が養生そのものだと教えられ、暮らしの知恵を食べるようにゴーヤーを食べてきたのです。どの成分がなにに効いているなどということは、はっきりとわかりません。ただ、ゴーヤーを食べることで、毎日元気をもらえるような気がする。それが「くすいむん」なのです。

それだけではありません。やまとんちゅう(日本人)はこれを「沖縄の伝統的な食文化」などと言いますが、うちなんちゅうは、そんなにたいそうなことを考えているわけではありません。ただ、夏になればゴーヤーをいかようにも料理して食べる。その苦みを味わうことがごく自然だから、そしてなによりもおいしいから食べるのです。その積み重ねを伝統というなら、うちなーには「苦みの伝統」があると言えます。苦みを美味しく食べる伝統です。故郷を遠く離れて暮らすうちなんちゅうはたくさんいます。しかし、故郷に帰りたければゴーヤーを一口含むだけで十分だという人もいます。なつかしい苦みは、家族と囲んだ食卓の風景や、元気で暮らす父や母の姿、そして年老いても畑仕事に精を出す祖父母の笑顔を思い出させてくれるかもしれません。あるいはサトウキビ畑を渡るてぃだ(大陽)の風を思い出させてくれるかもしれないのです。

「ゴーヤーの苦みには、沖縄のすべてが凝縮されている」

そう言って胸をはるうちなんちゅうもいます。
楽しむために食べるのもいい。しかし、生きることの根っこに食べることがあるとしたら、まさに生きるために食べることになる。「くすいむん」はまさに、生きるための薬なのです。

カノさんに教えてもらったもうひとつのことば、「ぬちぐすい」がそれです。
沖縄に古くから伝わることばで、これは中国でいう「医食同源」に通じることばです。自然の恵みである食べ物を、「いのちの薬」としてたくさん食べるという暮らしの智恵を言い表したもと言われています。沖縄の人々は、この「ぬちぐすい」を暮らしの基本としてとして守り伝えてきたのです。

「国際通り近くの牧志公設市場にいってみるといい。ぬちぐすいの意味がわかるよ」
カノさんにそう言われて、さっそく那覇のメインストリート・国際通り近くの「牧志公設市場」に立ち寄ってみました。野菜をあつかう店には、いかにも健康によさそうだ、という南国の陽光をいっぱいにふくんだ野菜がたくさん並んでいます。鮮魚店を見れば色とりどりの魚が、水揚げされたままの姿で、あるいは切り身であふれています。鮮肉店を見れば、まさに豚肉が大きなまな板の上で解体される真っ最中かもしれません。泣き声以外なら何でもあるといわれるように、あらゆる部位が並んでいます。乾物店では沖縄近海で取れるはずのない昆布をはじめ、多くの海藻が売られています。なるほど、これが「ぬちぐすい」を支える風景なのです。

この「ぬちぐすい」が、沖縄に世界でも有数の長寿の風土を生み出したと言えるでしょう。
平均寿命で見ると、男性が76.67歳、女性はなんと84.47歳で、これは国内の全国平均からすると男性は第4位、女性はもちろん第1位という、まさに長寿県です。しかし、表面的に沖縄の風土をとらえるだけでは、この事実は理解しがたいものがあります。イメージで考えると沖縄といえば、料理なら豚肉、味つけには黒糖。あるいは油で炒めるチャンプルー。酒なら強い酒として知られる泡盛。高脂血症、高血圧、肝機能障害それに糖尿などという生活習慣病はいったいどうなっているのだろうか? しかも、一年を通してもっとも暑い地方であり、人々は体力の消耗という意味でも厳しい環境で暮らしているはず。「それがどうして長寿なの?」と考えたとしても不思議ではないでしょう。

「長寿」の背景には、さらに注目すべき事実がありました。沖縄では私たち現代人の死因の上位を占めるガン、心臓疾患、脳血管疾患による死亡率が極めて低いのです。とりわけガンと脳血管疾患の死亡率は全国でも最低なのです。

「ぬちぐすい」を支える食材の秘密に迫ってみましょう。


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