23)西之表港〜中種子町野間 3:ミニスカートにスーパーカブ
 
 

流行というのは不思議なものだ。
今、全国で女子高生といえば、ミニの制服、ルーズソックス、ヤマンバ、コギャル、援助交際と、大人たちによってつくりあげられた流行という暗闇のなかに閉じ込められた存在になっている。

多くの少女たちの話を聞いてきたが、自分のことばで語り、自分のスタイルで行動する者はほとんどいない。だが、それは大人に対してだけなのだ。深く話してみると、「自分」というものをはっきりともっていることに驚かされる。学校のこと、友だちのこと、親のこと、将来のこと、けっこう真剣に考えているんだ。まあ、外見はいろんな子がいて、ほんとうにいろいろだけれどね。

問題なのは大人の方だ。すべて大人社会の価値観ではかろうとして、大人の理解の範囲に押し込めようとする。理解できないものはすべて「変」とか「問題」のひと言でかたづけようとするのだ。しかし、従順に育てたつもりでも、彼女たちはぷいっと簡単に踏み出してしまう。

たとえば鹿児島の場合、どうやらルーズソックスは校則で禁じられているようだ。しかし、彼女たちは考える。放課後、公衆トイレではきかえてしまえば終わりなのだ。彼女たちは従順なふりをしている。従順とはこの場合、自分の価値観をもたない、自分の頭で考えないことを意味する。

だけどぼくは、58号線を歩いていてすれちがう女子高生たちを見て、わあ、いいなあと思ってしまった。
商店街を抜け、甲女川を渡り、両側の建物もまばらになってなんとなく町外れにきたかなという感じだった。突然五台ほどのスーパーカブが、猛烈なスピードでぼくを追い越していった。よく見ると足元はルーズソックスで固め、ヘルメットの首に巻いた少し長めのマフラーと、短めの制服のスカートを風になびかせ颯爽と走っていく。

「うわっ、スーパーカブだ」

ぼくは思わず思わず笑っていた。
これは女子高生だけではなく、種子島の高校生の流行りだと思うけど、バイクに乗っている子はほとんどが五〇ccのスーパーカブに乗っているんだ。お洒落なスクータータイプのバイクではない。銀行マンなんかが乗っている、あの「おじさんバイク」だ。

国内、あっちこっち行ったけど、高校生のあいだでスーパーカブが流行っているのは、おそらく種子島だけじゃないだろうか。ちょっとまてよ、「バイク通学はスーパーカブで」と校則で決められているのかもしれない。

「いいえ。五〇cc以内って定められているだけ」

道端にバイクを停めて話し込んでいた二人の女子高生に聞くと、そう言って笑った。
種子島の高校生たちにとっては、雑誌やテレビのコマーシャルで見るカラフルなスクーターやバイクより、スーパーカブがいちばんお洒落なんだそうだ。

「スクーターの方がかわいいんじゃない?」

ぼくのことばに彼女は声を上げて笑った。ぼくも自分で言っておきながら、バイクがかわいいなんて、変だなと思った。バイクに乗った君たちがかわいいと言うならまだしも、そのものが「かわいい」というのは、まさに女子高生の物言いだ。

「だって、乗りやすいよ。スピードは出るし、じょうぶだし」

「安定感あるしい……、長距離もだいじょうぶ」

そういえば、かなりの距離を走ってくる子もいる。毎日の通学のことだ、見た目よりも機能が第一。しかし、見た目もなかなか颯爽としていてよろしい。

ぼくを追い越していったカブは、集団のまま道路脇の自動車教習所に飛び込んでいった。卒業をひかえて、次は車の免許だ。
日本中どこもかしこも、おなじような髪型、おなじような化粧、おなじような服に身を包んで、おなじようなバイクに乗る。いくら芯のところではしっかり考えているんだといっても、ちょっといやになるね。高校生、子どもなんてものは、どこに行ってもみんなおなじようなことを考えているんだって決めつける大人もいやだね。

「へえ、そんなのがいいんだ。変わってるなあ」

そういうふうに驚かせてくれる子どもたちは、たくさんいるんだ。


「種子島へ 拒めない海」2000年6月刊 再海社
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