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出発して二時間半。国道58号線の種子島での終点、島間の港に着いた。ぼくは少し大きいめの漁港くらいに思っていたが、予想以上に大きな港だった。さすがは日本の宇宙開発を担うロケットが上陸する港だ。それに屋久島、口永良部島をつなぐフェリーの発着地でもある。大きくてあたりまえだ。 港のなかを歩いてみた。風は強く、波が岸壁を洗っている。水のそばには近寄れない。船はしっかりとつながれ、動いている船はない。 港のなかでいちばん大きな建物は、二本のパイプを支えるように建っている大きな鉄塔だった。電力会社の火力発電所の施設だ。その発電所を起点にして、高圧鉄塔が坂の上に続いている。暮らしのなかに必ず必要な風景だが、自然を押さえつけるように立つその姿は、とても醜いものだ。 歩いているあいだはそうでもなかったが、たどりついてほっとしたこともあるのだろうか、猛烈な寒さを感じた。あわててフェリーの待合所に飛び込んだ。乗船の受付カウンターはあったが、人影はない。正午をまわったばかりだったから、食事に出たのかもしれない。こんなに風が強く、波が高くてもフェリーは出航するのだろうか。欠航の案内はどこにも出ていなかった。 自動販売機で缶コーヒーを買い、椅子に腰をおろした。待合所の外で動いているのは、風だけだ。ひとの姿が見えないというのはやはりさみしいものだ。六十キロ近くを歩いてきて、たどりついたのはだれもいない港だった。この視野の中、どこかに必ずだれかがいると思ってみても、実際に姿を見、顔を合わせ、ことばを交わすことがなければ、だれもいないも同然だ。 雨が降りだした。あたりは少しずつ暗くなっていく。 ぼくは夕方までここでぶらぶらし、バスを待つつもりでいた。だけどそれは、この港でいろんなひとに出会い、いろんなひとと話そうと思っていたからだ。 待合所で、ずっと窓の外を見て座っていた。雨はみぞれに変わった。風はあいかわらず強く吹いていた。 「種子島へ 拒めない海」2000年6月刊 再海社 |
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