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苦味が「うまい」人々は世界中にいる

世界の多くの地域で「苦い(ビター)」は好ましくない味として認識されています。
苦味はまずい、苦味は毒、苦味は危ない…。
しかし興味深いことに、世界には苦味をマイナスと捉えない人々もいるのです。

赤道の真下、太平洋に浮かぶインドネシア。この東部、ハルマヘラ島に住むガレラ族。
今はコメやアワを主食としていますが、彼らはもともとサゴヤシを採集し、そのでん粉を食の中心として生活してきた民族です。
ガレラ族は味を表す言葉として「うまい」「うまくない」の他に「塩辛い」「酸い」「辛い」「苦い」「甘い」の五つを持っています。この中で「甘い」だけは多くても少なくても好ましい、と認識されていますが、その他は多くても少なくてもうまくないと考えられています。
もちろん苦味についてもそれが当てはまるわけで、つまりは、多すぎず、少なすぎない苦味は決してまずいものではない、ということを意味します。
また、同じくインドネシアのスラウェシ島のブギス族、彼らも「苦すぎ」ない「苦味」は中性の味と捉えているようです。

ではインドネシア全土で「苦味はうまい」と感じられているかといえばそうではありません。
首都ジャカルタでは、共通言語であるインドネシア語が使われていますが、このインドネシア語の中では「苦い」と「渋い」は悪い味として表す言葉として認識されているのです。

「苦味がうまい」人々に話を戻しましょう。
インドの北に位置するネパール。ネパール東部にはトウモロコシ、ヒエ、ソバ、ジャガイモなどを主食とする民族が住んでいます。
その一つ、リンブー族。近隣のライ族と似通った味の表現語いを持っていますが、ライ族が「苦い」(ある種の野草やそのまま噛んだタバコの葉の味)を悪い味として用いているにもかかわらず、リンブー族は「苦い」を、「酸い」などと同じ、中性の味として認識しています。
リンブー族の味を表す言葉には「苦い」の他に「甘い」「辛い」「酸い」、そして「油味」というものがあります。この「油味」は「うまい」にも通じる味ですが、日本のだしのようなアミノ酸主体の味ではなく、「油の味」が加わったもの、つまりはコクのある味と考えられます。(タイではこの油味をナッツやココナッツミルクの味を指す)

苦味はよく、油によってマスキングされる(隠される)といいます。油が含まれた味を表現する言葉を持つほどに、油(もしくは油分を含んだ天然の食品)に親しんだ人々にとっては、食事で共にとられる苦味に対し、より肯定的になるのかもしれません。

そして最後に、ヴェトナム北部からラオス北部、タイ北部に住むミエン族(ヤオ族)の苦味に対する認識。
彼らは味をあらわす語として「甘い」「塩辛い」「辛い」「酸い」「苦い」そして、「好ましい苦み」という六つを持っています。
苦い味そのものはマイナスの評価なのですが、おもしろいことにゴーヤーやパパイヤの花などの味は「好ましい苦み」という別のものとして認識しているのです。「苦い」をこのように分けて考えている民族はそうそうあるものではありません。


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