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苦味が味覚を豊かにする

ヒトが初めて乳以外の味に出会う、離乳期。この離乳期の食事の与え方には民族によってさまざまな特徴があります。多くの民族に共通なのは、ごくやわらかな、そして味のマイルドなものからスタートし、徐々に硬さ、味の強さをアップしていく。そして1年半から3年かけて大人と同じ食事に近づけていく、という手順です。

しかし国によっては、特に多産が慣習となっている地域では、上の子供が離乳期に差しかかるころにはすでに、次の子を妊娠しているというケースも多く、なかなか離乳食に手をかけることが出来ません。ひっきょう、離乳が始まったら猛烈なスピードで大人の食事に近づけていきます。

中米グアテマラに渡っていた知人の話では、あちらの子供は1歳になるかならないかのうちにすでに、香辛料たっぷりの激しく辛い食事を大人と共に平然ととっているとか。

「苦い」味も、離乳食や幼児食としては先ず最初に避けられるものです。それ以前に、生体の反射として多くの赤ちゃんや子供が受け付けないでしょう。
しかし、インドネシア、ヴェトナムなどの東南アジアで苦味が肯定的に認識されていることを考えるに、親も、その親も常に身近に苦味のある生活を継続し、幼いからといって苦味を避けることなく子に与え、その繰り返しの苦味経験が根底にあるのではないか、と思われてならないのです。

そして、日本人にしても「苦味」という言葉が、今のところ否定的に捉えられているのは、苦味に対して発展途上の過程にあるからではないか、もしくは、苦さに旨さがあるのに気付きながらもそれを表現する言葉を作り出すことを、先送りにしてしまったからではないでしょうか。
ゴーヤーはこの東南アジアを原産とする食物。苦味に対しての先進地域です。なにかしら、この「味」の認識に影響を与えているかもしれません。
こうして考えてみると、苦味こそが味覚に奥行きと豊かさを生み出しているのです。


参考文献「たべる食行動からの心理学」中島義明今田純雄著朝倉書店


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