|
● あなたも私も苦いの大好き-1 生体としての苦味好き
ヒトが健康に生きていくためには、どのような栄養が必要かを様々な研究によってはじき出したのが「栄養所要量」、つまり、「これくらいお食べなさい」という目安量です。
しかし、このような細かな数字に神経をとがらさずとも、疲れた時には甘い物が欲しくなったり、人によっては濃い味の物が食べたくなったりと、頭でなく体の方から自然に必要な物を求めようとします。
甘い物に含まれる糖分、濃い味の主体であるナトリウムなどは、生命を維持するために不可欠な成分として、不足状態に陥らぬようコントロールされているのです。
一方、苦味はどうでしょう。
苦味は毒をはらんだ味であるとして、生体維持にとって避けられこそすれ、生きていくための必需品とみなされることは、自然の成り行きから考えられません。しかし、それなのに求められる苦味。苦味はいわば嗜好品なのです。
ビールを飲み、ゴーヤーを食べ、食後にはコーヒーを楽しむ…。
なぜヒトは苦味を食卓に取り入れているのでしょう。
ここに面白い資料があります。
「苦味については、比較的舌の奥の方にある味覚細胞によって感じられる。その苦味の中でも、快い苦味と不快な苦味とがある。不快な苦味というのは、舌の奥の方でもさらに奥の方で喉に近い方の味覚細胞によって感じられる味である。これは喉を刺激し、受け入れまいとする拒否反応を導き出す部分での刺激が強い。したがって喉を通すことは非常に困難である。一方、心地よい苦味として受けとられるものは、舌の奥の方の細胞といっても、その前の方に位置する味覚細胞によって感じられる。この場合は、喉は反射作用は起こさないから拒否反応は起こらない。また気持ちの良い味としても感じられるものである。(『味の文化史河野友美著世界書院』)」
舌をはじめ口腔内には多くの味蕾がありますが、舌の全体を一枚の地図として、「甘味を感じやすい地域」「塩味を感じやすい地域」といった具合に分割することができます。
この説では苦味には二つの種類があり、不快な苦味を感じる地域、心地よい苦味を感じる地域と、それぞれ生体に都合の良いように働き分けている、と考えられているのです。
|