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ゴーヤーもっと知りたい
 
  苦味をやさしくつつむ ニガウリのこねり(熊本)

こねり、こかけ。耳慣れない料理名です。この「こ」とは「粉」、つまり小麦粉のことでこの料理に欠かせない仕上げの素材。作りはじめてから完成までに10分とかからない、大変シンプルかつ意外(といっては失礼ながら)なまでに美味しい一品です。

料理イメージ1まず、ゴーヤーを半割にして薄切りに。そのゴーヤーを油で炒め、ゴーヤーが十分隠れる程度のだし汁を注いで醤油を加えます。ゴーヤーがさっと煮えたら水で溶いた小麦粉を入れて、フツフツとねばりが出てお鍋の中が一つにまとまったら出来上がり。

基本的に材料はゴーヤーだけで、そのゴーヤーがこってりと粉でとじられているのですから、小鉢に盛った時には、全体的にねっちりとした茶色のかたまりといった感で、何とはなし地味な印象を受けます。ぽってりと盛られた「ゴーヤーのこねり」を前にいざ「美味しいのだろうか?」という疑念を抱きつつも箸を伸ばしてみると…・果たしてこれが、後をひく味なのです。

料理イメージ2こってりの原因である「調味液の小麦粉とじ」の部分が、炒め油のコクまでも十分に含みきっていて、飾り気のない様子でゴーヤーの苦味を包んでいます。おそらく、味付けがだしと醤油だけ、というのが幸いしているのでしょう、媚びたところが全くなく、これがまた油の味とゴーヤーの苦味ともよく合うのです。

それにしてもこの口触りといったら!ねっちり、もっちり、ゴーヤーしゃりしゃり。関東の方には、鉄板でじゅうじゅうやる、あの「もんじゃ焼き」と同系列の、と言えば好例かもしれません。

ゴーヤーの苦味を受け止めるには単なる煮浸しでは心もとない、この「こねり」のように重厚な「和え衣」でこそ、苦味の強い熊本のゴーヤーをより美味しく引き立たせることができるのでしょう。
作る手順のシンプルさ、少々時代遅れな品揃え、外見の純朴な様子、そして、ついつい食べてしまうその味。まさに、家庭料理のあるべき条件を備えた料理です。
このシンプル料理「こねり」も、作り手、そして時代とともに少しづつの変化を果しているようで、使う材料もゴーヤーだけでなく茄子の薄切りを入れたり、小麦粉だけでなく片栗粉を半々に加えたりして、より好みに合うよう手が加えられています。
茄子を入れればその茄子が炒め油を吸収して、よりコクのある料理になりますし、片栗粉を加えることでそのとろみがもっと軽やかに、そして仕上がりの印象の透明度を増す役割を果すことになります。

ゴーヤー1本で約4人分、そこに粉類を1/2カップほど使いますから、この「粉」も重要な材料のひとつです。この「粉」、実は栄養学的にも重要な役割を担っているのです。
ゴーヤーに多く含まれているビタミンC。このビタミンCは熱や水に弱く、だし汁などで煮ることでその煮汁にどんどん溶け出していきます。もともとゴーヤーのビタミンCは熱に強い種のものである、と言われていますが、それでも調理によって多少の損失は免れません。しかし「こねり」のように、煮汁を粉でとじ、その煮汁ごといただいてしまう料理は、ゴーヤー本体はもちろん、煮汁に溶け出たビタミンCも無駄なく無理なく食べることができるのです。

この「こかけ」、大家族の食卓にのせるものを作る時は、ゴーヤーを盛大に刻み、粉をも盛大に使用するのでしょう。大きな甕のような入れ物に保存された小麦粉をガッガとどんぶりですくい、程よい水加減で大きな鉢に溶いていく。大鍋からは、鍋肌でちりちりだしと醤油が焼け付く良い香りがたっている。そこに水溶きの粉を入れて、木杓子でざっと練り混ぜる、その杓子と鍋の触れる音。
「こねり」「こかけ」には、こんな風景までも思い起こさせるたたずまいがあるのです。


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