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ゴーヤーもっと知りたい
 
  「錦茘枝」「苦瓜」そして「ゴーヤー」からの考察

cut_2-09.jpg中国にはゴーヤーを指す言葉として「苦瓜」「癩萄」「苦瓜叶」「苦瓜葉」「錦茘枝」といくつかの呼び名があります。

「苦瓜」などは分かるとして、ゴツゴツとたこの植物が、なぜ「茘枝(レイシ)」なのか、その訳はあの『救荒本草』に「茘枝(ライチー)に似ている」とも書かれたように、楊貴妃の好物である果実のレイシに似ていることからと言われています。

果実のレイシは3000年もの昔から中国に自生する植物といわれ、中国人にとっては大変馴染み深い果物。目新しいゴーヤーに、馴染み深い果物の名を冠するのはけだし自然の成り行きといえるでしょう。果物のレイシは大変に繊細な植物で、枝に成ったときは、その殻は華やかな赤色を呈しますが、ひとたび枝を折ると1日ともたず、その赤色は暗い茶色へと変化します。鮮度も非常に落ち易く、そこからも楊貴妃のために国民を犠牲にして早馬でレイシを届させた玄宗帝のあっぱれな盲目愛ぶりは後世の語り草になるわけです。蛇足ながら、「錦茘枝」の頭にある「錦」とは、ゴーヤーが熟して黄色くなり、その実から深紅の種がはじけ出た様相が、錦のように華麗であることからではないかと推測します。

さて、目を日本に移すと、江戸時代に書かれた多くの書物の中で、沖縄では「ゴーヤー」と呼ばれるこの植物が、「錦茘枝」「苦瓜」と書かれているのが見受けられます。 「錦茘枝」も「苦瓜」も中国と同様の呼び名であるのに、なぜ沖縄地域だけが「ゴーヤー」というまるで異質な名前が席巻しているのでしょうか。 その手がかりの一つとして、「ゴーヤー」の由来は、中国語から来ているのではないか、という考えがあります。

中国では「苦瓜 ku gua」「苦瓜叶 ku gua ye」「苦瓜葉 ku gua ye 」「錦茘枝 jin li zhi」と発音しています。

この中で「苦瓜」「苦瓜叶」「苦瓜葉」、「クー グア」「クー グア イエ」を聞くとどこか「ゴーヤー」との音が感じられはしますまいか。 ここで先ほどふれた、琉球王国に居住していた中国福建人の唐営での営みと、地元琉球人との交流が像を持って浮かんでくるのです。故郷、福建での暮らし方をそのまま持ち込んだ福建人は自分の家屋の軒先に「苦瓜 ku gua」を栽培する。唐営を自由に出入りする琉球人が、初めてみるその珍妙な植物を指して、これは何かとたずねる。そして返ってきた答が「クー グア」。

福建省の出身ですから福建語が用いられ、この発音とはおそらく違うものと思われますが、福建省よりさらに南部の広東省では「フー グア」と発音されていることから、福建語での「苦瓜」も多分似た音、リズムで話されていたと考えられます。 「クー グア」「クー グア」。

縁側ならぬ軒先での会話、文字を介さない民間人同志の濃厚な口でのやり取りの積み重ねが、「苦瓜」を指して「ゴーヤー」と呼ぶ沖縄での言葉の形成につながったのではないでしょうか。

同じ漢字圏の住人として、もし先に「苦瓜」「錦茘枝」の文字を見たのであれば、その文字の琉球読みの方が優先されるはずです。 沖縄での「ゴーヤー」という呼ばれ方が、ゴーヤーが琉球に根付いた際、公式ではなく、民間のレベルで行われていたのではないか、そしてその媒体に唐営に住みたくましく自分たちの生活を営む福建人の存在が強く思い起こされるのです。
逆に日本では書物でも見られるよう「苦瓜」「錦茘枝」と中国とまるで同じ名前で伝わっています。

特に、「茘枝」は生鮮食品としてまだ日本人がみたことのない果物であって、その「茘枝」という言葉が使われたということは、その伝来には必ず文字が存在しており、文字が存在していたということはあるレベル以上の公式な伝わり方がなされた、と推測できるのではないでしょうか。


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