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東海岸の道路は西海岸の国道や、島の中央部を走る古くからの街道に比べると、概して狭くて曲がりくねっている。だが、海岸線は起伏に富んで、眺めは圧倒的にこちらがいい。
馬立の岩屋は西之表市と中種子町の境、犬城海岸にある。
波が断崖をえぐり、穴をあけ、できた自然の造形だ。岩屋とはいうものの、岩をえぐっているのではなく、分厚く堆積した土をえぐっているのだ。穴は断崖を貫通し、さながら波が砕け散る岩場の先端へのトンネルだ。入り口には、崩落の危険があるから中に入ってはいけないと、看板が立っていた。
もちろんぼくは中に入った。中は地層がむき出しになり、そこに埋もれていた小石が星のようにあらわになっている。が、忠告どおり、小石がぱらぱらと落ちてくる。
「ちょっと大きな崩落があったらおだぶつだな」
首をすくめながら波打ち際へ急いだ。
出口から首を突き出して上を見る。ほぼ垂直な断崖だ。出口には小石ばかりの小さな浜ができていた。波がえぐり落とした土だけ洗い流し、石だけを残したのだ。
観光パンフレットでは、ここを見所のひとつとして紹介していた。たしかに海岸線は複雑な形をしていて、眺めるにはおもしろいかもしれない。だが、訪れるひとは少ないようだ。
海岸を歩いていると、石ばかりだと思っていたが、サンゴのかけらや貝殻がたくさん混じっていた。おもしろそうな形のものをいくつかひろった。だれにというわけではない。日常にもどったときの自分へのおみやげだ。
犬城海岸からしばらく、道路は海岸線を離れる。
すぐに右側にゴルフ場が現れる。偶然の造形である変化に富んだ海岸線を見てきた後だ、さすがにきれいなグリーンを見ても人工的につくられたいびつさしか感じなかった。
ゴルフ場を過ぎると、今度は左手に、大きなパラボラアンテナがいくつも、まっすぐ天空を向いているのが目に入った。
「増田の宇宙通信所です」
F君はその風景に目もくれず、まっすぐ前を向いてハンドルを握っている。
広大な敷地に大小四つのアンテナが配置されている。
「大きいなあ。あんな大きいアンテナ、はじめて見たよ」
「子どもみたいだなあ。車、停めましょうか」
F君はやれやれという表情で車を道路脇に着けてくれた。しかし、敷地はぐるっとフェンスに囲われていて、アンテナには近づくことはできない。
「いちばん大きいのは、直径十メートルや二十メートルではきかないはずですよ」
フェンスに張り付くようにして中を見ているぼくの後ろで、F君が説明してくれた。
「こういう風景は、SF映画の中だけのものだと思ってた……」
「ほんとに、もう……」
F君はぼくの過剰な反応に少々あきれていたようだ。
「ここはね、宇宙センターから打ち上げたロケットや人工衛星の状態を追跡する施設なんですよ」
これらの設備により、人工衛星からの電波を受信し、人工衛星の軌道や姿勢、積んである電子機器が正しく働いているかどうかを知り、状況に応じて人工衛星に対するコマンド(指令)電波を送信し、人工衛星を維持管理する役割を果たしています。
人工衛星の追跡管制設備とは別に、ロケットから送られてくるテレメトリ信号を受信して、ロケットの飛行状態を監視するため、1978年11月に直径10ロ一基のパラボラアンテナとともに、第2観測棟が設置されています。
宇宙開発事業団のホームページを見ると、この施設に関してのこんな説明がある。おなじような施設は、和歌山の勝浦、沖縄、スウェーデンにあるそうだ。筑波にある追跡管制センターを中心に、種子島の施設をあわせこれら四つの施設との間で追跡管制網をつくって、人工衛星の管制をしているということだ。
「ここはね、もともと大塩屋っていうところで、大きなマキがあったところだそうです。塩もつくっていたそうですよ」
道路の反対側のサトウキビ畑では、年老いた夫婦が二人だけで刈り取りをしていた。
馬立の岩屋の、あの断崖のように、このあたりのサトウキビ畑も侵食されていくのかもしれない。ゴルフ場というリゾートの波や、ロケットという科学技術の波に。
「種子島へ 拒めない海」2000年6月刊 再海社
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