南ぬ風(ふぇーぬかじ)
 
  (1)夏ぬ風

沖縄本島に上陸し、思う存分暴れまくった台風7号は北へ去った。本土にも上陸し、猛威をふるったらしい。死者が出るなど、テレビや新聞の報道で痛ましい報告を伝え聞いている。

沖縄は「風の島」である。気温や湿度が高い夏場でも、海を横切る涼風が吹いて案外過ごしやすい。南部の那覇などアスファルトで覆われた都市部では不快な熱風を感じることもある。けど、僕の住む中部の高台は、灼熱の太陽の下でも、風の救いでクーラーなしで過ごせる日の方が多い。

ドライブ中はふだん、車の窓を全開にして、浜風を浴びる。自然の風の心地よさが、クーラーよりもずっと気持ちいい。しかし、残念なことに今、車の窓が壊れていて、それができない。有料駐車場やガソリンスタンド、ファーストフードのドライブスルーでも苛立つ毎日。早く修理すればいいのに。「なんくるないさ(何とかなるさ)」と悠長に構える自分は、去年33年ぶりに移り住んだ生まれ島沖縄の空気にそろそろ溶け込んでいる。

 

そよ風はありがたい。しかし、被害をもた轤キ台風の襲来は御免こうむりたい。
相次ぐ台風の襲来で、沖縄は農作物が甚大な被害を被った。収穫期を迎えたマンゴーやゴーヤーなど基幹作物が、ハウスの損壊や落下などで痛手を受けた。サトウキビも地面に倒れ伏している。先日、ドライブ中に見つけたひまわりの群生はものの見事になぎ倒されていた。紺碧の空を背景に今度写真を撮ろうと思っていたのに、もったいない。

旬のゴーヤーは、例年なら安いところでは、大振りのものが1本100円以下で手に入るところ、卸価の急騰を受けて日によっては300円近くまで値段がはね上がっている。この時期、頻繁にチャンプルーにして食べるのだが、今はゴーヤーにはなかなか手が出せないでいる。

今年はどうやら台風の当たり年のようだ。南洋では地球温暖化の影響を受けて、勢力が大きい台風が次々に発生している。
発生源に近い沖縄は台風の常襲地帯。亜熱帯の洋上でエネルNMーを吸い上げた台風は、力も有り余っている。上陸やかすめる回数も本土に比べて断然に多い。けれど不思議なことに農作物を除いて被害は本土に比べるとさほど大きくはないように思える。

台風7号が沖縄本島を暴風域に巻き込むほんの数時間前、僕は読谷村の海辺の集落を車で走っていた。中心に近くなるほど風雨が急激に強くなる7号の特徴もあっただろうが、海は思ったほど荒れていなかった。文字どおり「嵐の前の静けさ」の様相だった。

民家の軒先では、おばぁがたんたんと庭の草むしりをしていた。「おばぁ、台風が来るんだぞ!」と、僕はあまりにも泰然自若とした仕種に思わず心配になった。でも古いその家屋に目をやると、しっかり雨戸を閉め、飛びそうなものはロープで固定してあった。おばぁの仕振りは備え万全にしての余裕だったんだな、と後で感じた。きっとおばぁは難無くこの台風をやり過ごしたに違いない。庭先にぶらさがっていた自家用のゴーヤーは多少の被害を受けただろうけど。

 
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