南ぬ風(ふぇーぬかじ)
 
  (11)ティーダ

沖縄の日差しは強烈だ。白昼、ティーダ(太陽)は燃え盛り、じりじりと大地に照りつける。地面に映る影も濃い。めらめらと熱を発散するアスファルトの上に、漆黒の影はしっかりとした輪郭を描いている。

沖縄に降り注ぐ紫外線量は、他府県の1.2ー1.7倍(年平均値)といわれる。これだけの日差しだから、ウチナーンチュは概して色黒の人が多い。こちらでの無理な日焼けは、低温火傷で皮膚に水膨れができたりするから、注意が必要だ。

暑いといっても、沖縄は海洋性気候。炎天下でも日陰に入れば海風が心地いい。沖縄では、車の信号待ちの光景も面白い。ドライバーは、直射日光を避けるため、信号待ちの停車時は歩道橋や道路標識の陰に止める。そのため、車が停止線の随分と手前だったり、車輌同士の間隔が異常に開いていたりする。

以前、県内のショッピングモールに、養護学校の生徒たちの絵画展を見に行った。「働く人たち」がモチーフだった。笑えたのは、画用紙に描かれている人物画の皮膚の色が、はだ色というよりこげ茶色に近いものが多かったこと。

父母や病院のスタッフ、お店の人など生き生きと描かれていたが、みなさんジーグルー(色黒)であった。身近な人物の皮膚の色まで、子どもたちはよく観察しているなあ、と感心してしまった。

とにかく沖縄は、昼間が長い。午後6時をすぎても、ティーダは空のはるか上方でギラギラと輝いている。僕の自宅近くの宜野湾トロピカルビーチは、夕刻になると授業や仕事を終えた学生、サラリーマンでいっぱいになる。

ビーチの遊泳時間は6時までと制限があるが、浜辺は夜中まで人々の活気があふれている。中高生らは学校帰り、海に直行。体育着の短パン一丁で遊泳禁止区域の防波堤から海に飛び込んで歓声をあげている。中には部活のユニフォーム姿で泳ぐ女子中学生や高校生の姿も。防波堤には「サメ出没注意」の看板があるが、何食わぬ顔で波に揺られている。夏場は日没の午後8時ごろまで、平気で泳いでいる。ワイルドなやつらだ。

日焼けのことを考えたら、沖縄では夕刻から海に入る方が無難かも知れない。地元の人はそれをよく知っていて、暮れなずむ頃、三々五々ビーチを訪れる。滞在日数に限りがある観光客は、炎天下でも必死になって旅程をこなし、海辺で肌を焼いている。中には露出度の高い衣服や、水着姿で街やリゾート地域を歩く人もいる。?やけど?しないか心配である。

ゆったりと空を流れるあかね雲を追い掛けながら、自宅からビーチへ向けて、自転車のペダルをこぐ。デイパックには、カメラと缶ビール。長い下り坂を飛ばすことおよそ15分でビーチに到着する。防波堤に座り、水平線に沈む夕日をながめながら、ビールをぐいっと飲み干す。

やがて、辺りはたそがれ色に染まる。波打ち際で戯れる人たちの歓声に導かれ、いつの間にか自分の足も波と砂に洗われている。都市部に住んでいながら、なかなかの贅沢である。帰り道は上り坂でしんどいけれど…。

 
(c)Copyright, 2002 John Matsumoto. All rights reserved.